家を売って利益が出ると、確定申告で払う所得税だけでなく、翌年度の住民税や国民健康保険料、後期高齢者医療保険料なども上がることがあります。とくに年金生活の方や、扶養に入っている家族が売る場合は、思わぬ負担増につながることがあります。
この記事では、家の売却が翌年の住民税・保険料などにどう影響するか、影響を小さくする方法を解説します。
※2026年11月時点の法令(国税庁タックスアンサー:令和8年4月1日現在の法令等)をもとに作成しています。特例が使えるかどうかは個別の事情で変わるため、最終的には税務署や税理士にご確認ください。
家を売った翌年に影響が出るもの一覧
| 項目 | 影響 | いつから |
|---|---|---|
| 住民税 | 譲渡所得に5%(短期は9%)がかかる | 売った翌年の6月ごろから |
| 国民健康保険料(税) | 譲渡所得を含めて計算され、上がることがある | 売った翌年度 |
| 後期高齢者医療保険料 | 同上 | 売った翌年度 |
| 介護保険料(65歳以上) | 所得段階が上がることがある | 売った翌年度 |
| 医療費の自己負担割合(70歳以上) | 一時的に「現役並み所得」と判定され、3割負担になることがある | 売った翌年の8月ごろから1年間 |
| 家族の扶養・配偶者控除 | 売った人の所得が増えると、家族が控除を受けられなくなることがある | 売った年の分 |
いずれも影響は基本的に1年分だけです。ただ、金額が大きくなることもあるので、売却前に把握しておきましょう。
住民税はいくらかかる?
家の売却益(譲渡所得)には、所得税とは別に住民税がかかります。
| 所有期間(売った年の1月1日時点) | 所得税(復興特別所得税を含む) | 住民税 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 5年以下(短期) | 30.63% | 9% | 39.63% |
| 5年超(長期) | 15.315% | 5% | 20.315% |
| 10年超のマイホーム(6,000万円以下の部分) | 10.21% | 4% | 14.21% |
例:長期の譲渡所得が1,000万円なら、住民税は約50万円です。所得税は確定申告のときに払いますが、住民税は翌年6月ごろに通知が届いてから払うため、売却代金を使い切ってしまわないよう取っておきましょう。計算方法の全体は譲渡所得税の計算方法をご覧ください。
会社員は給与天引きに上乗せされる
会社員の場合、売却益にかかる住民税も原則として給与からの天引き(特別徴収)に上乗せされます。会社に知られたくない場合は、確定申告書の住民税の徴収方法の欄で「自分で納付」を選ぶと、別に納付書が届く扱いにできることがあります(自治体によって扱いが異なります)。
国民健康保険料・後期高齢者医療保険料への影響
国民健康保険料(税)や後期高齢者医療保険料の「所得割」は、前年の所得をもとに計算されます。この所得には、家を売った利益(特別控除を差し引いた後の譲渡所得)も含まれます。
- 利益が大きいと、翌年度の保険料が大きく上がることがある
- ただし保険料には年間の上限額(賦課限度額)があり、それ以上は上がらない
- 所得が少ない人向けの保険料の軽減(7割・5割・2割軽減など)が受けられなくなることがある
年金収入だけで暮らしている方は、売却した翌年度だけ保険料が急に上がり、驚くケースが多い項目です。お住まいの市区町村の窓口で、事前に試算してもらうと安心です。
70歳以上の医療費の自己負担割合
70歳以上の方の医療費の窓口負担は、前年の所得をもとに判定されます。家を売った利益で所得が増えると、1年間だけ「現役並み所得者」として3割負担になることがあります。高額療養費の自己負担限度額の区分も上がる可能性があります。持病で通院が多い方は特に注意しましょう。
家族の扶養や配偶者控除への影響
扶養に入っている家族(配偶者や親)が家を売って利益が出た場合、その年の合計所得金額が増えて、扶養している人が配偶者控除や扶養控除を受けられなくなることがあります。2026年時点では、控除を受けられるのは家族の合計所得金額が58万円以下の場合です(配偶者特別控除などは別の基準)。
健康保険の扶養(被扶養者)の判定は、加入している健康保険によって一時的な売却収入の扱いが異なります。売る前に勤務先の健康保険組合などに確認しましょう。
影響を小さくする方法
① 3,000万円特別控除などの特例を使う
マイホームを売った場合は、3,000万円特別控除を使えば、多くの場合は譲渡所得が0円になります。譲渡所得が0円なら、住民税も、国民健康保険料などへの影響も通常はありません。相続した空き家の特例など、ほかの特例は特例・控除一覧で確認できます。
② 必ず確定申告をする
特例は確定申告をしないと使えません。申告しないと特例が適用されず、住民税や保険料の計算にも影響します(確定申告のやり方)。
③ 取得費・譲渡費用をもれなく計上する
取得費(買ったときの金額)や譲渡費用(仲介手数料など)をきちんと差し引けば、譲渡所得が小さくなり、住民税や保険料への影響も減ります。購入価格がわからない場合は取得費不明の5%ルールをご覧ください。
④ 損が出た場合は損益通算を検討
マイホームを売って損が出た場合、条件を満たせば給与所得などと相殺でき、所得税だけでなく住民税も減ります(住宅ローンが残る家の譲渡損失の特例)。
⑤ 売る年を考える
影響は売った翌年度に集中します。退職して収入が減る年、年金生活に入る前の年など、ほかの所得との兼ね合いで負担が変わることもあります。所有期間が5年・10年を超えるタイミングも税率に影響するので、所有期間の数え方も確認しておきましょう。
まとめ
- 家の売却益には住民税(長期5%・短期9%)がかかり、翌年6月ごろから払う
- 国民健康保険料・後期高齢者医療保険料・介護保険料も、翌年度は上がることがある
- 70歳以上は医療費の窓口負担が1年間3割になることがある
- 扶養に入っている家族が売ると、扶養している人の控除がなくなることがある
- 3,000万円控除などで譲渡所得が0円になれば、通常これらの影響はない
影響がどれくらいになるかは、売却価格しだいです。まずはいくらで売れそうかを確認しましょう。
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