親が一人で住んでいた実家を相続し、空き家のまま売る――。この場合、自分が住んでいなくても、条件を満たせば売却益から最高3,000万円を差し引ける特例があります。「相続した空き家の3,000万円特別控除(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例)」です。
ただし、建てられた時期、耐震、売る期限、売却代金など条件が細かく、2027年12月31日までの売却が対象です。この記事では、条件と使い方をわかりやすく整理します。
※2026年11月時点の法令(国税庁タックスアンサー:令和8年4月1日現在の法令等)をもとに作成しています。特例が使えるかどうかは個別の事情で変わるため、最終的には税務署や税理士にご確認ください。
相続した空き家の3,000万円特別控除とは
相続した実家(亡くなった人が住んでいた家)またはその土地を売ったとき、売却益から最高3,000万円を控除できる特例です。相続人が3人以上いる場合、2024年1月1日以後の売却では1人あたり最高2,000万円になります。
相続した実家は、親が何十年も前に安く買っていることが多く、取得費がわからない場合は売却価格の5%しか取得費にできないため、利益が大きくなりがちです。この特例を使えるかどうかで、税金が数百万円変わることもあります。
計算例
相続した実家を解体して土地を2,500万円で売却。取得費は不明(5%=125万円)、解体費と仲介手数料などの譲渡費用が290万円の場合。
| 特例なし | 特例あり | |
|---|---|---|
| 譲渡所得 | 2,085万円 | 2,085万円 |
| 特別控除 | 0円 | -2,085万円(上限3,000万円) |
| 税金の目安(長期20.315%) | 約424万円 | 0円 |
対象になる家の条件
- 1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた家であること
- 区分所有建物(マンションなど)として登記されていないこと
- 相続の直前に、亡くなった人が住んでいたこと
- 相続の直前に、亡くなった人以外に住んでいた人がいなかったこと(同居の家族がいた場合は対象外)
- 亡くなった人が老人ホームなどに入所していた場合も、一定の条件を満たせば、入所直前まで住んでいた家が対象になる
マンションは対象外なので注意しましょう。また、相続の直前に子どもなどが同居していた家も使えません。
売り方の条件(3つのパターン)
| 売り方 | 条件 |
|---|---|
| ① 家を耐震リフォームして(または耐震基準を満たした状態で)家ごと売る | 売るときに耐震基準を満たしていること |
| ② 家を取り壊して更地で売る | 取壊し後、売るまでの間に建物などの敷地として使っていないこと |
| ③ そのまま売り、買主が売却の翌年2月15日までに耐震改修か取壊しをする | 2024年1月1日以後の売却が対象。期限までに工事が終わることが条件 |
どのパターンでも、相続してから売るまでの間に、人に貸したり、自分や家族が住んだり、事業に使ったりしていないことが条件です。売るまでの間に「とりあえず貸す」と特例が使えなくなります。
③の方法ができたことで、古家付きのまま売り、解体やリフォームは買主に任せることもできるようになりました。売主が解体費用を先に出さずに済むため、検討する価値があります。
そのほかの条件
- 売却の期限:相続の開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで(たとえば2025年5月に相続が発生したら2028年12月31日まで)。かつ、2027年12月31日までの売却が対象です。
- 売却代金が1億円以下:土地と建物を分けて売った場合や、ほかの相続人が売った分も合算して判定します。
- 親族などへの売却は対象外:親子・夫婦・生計を一にする親族、売却後に同居する親族、内縁関係の人、同族会社などへの売却は使えません。
- 同じ家で一度だけ:同じ亡くなった人から相続した家について、以前にこの特例を使っていないこと。
「相続税の取得費加算」とはどちらか一方
相続税を払った場合、その一部を取得費に加算できる特例(相続財産の取得費加算の特例)がありますが、空き家の3,000万円特別控除とは併用できません。多くの場合は空き家特例のほうが有利ですが、相続税額が大きい場合などは比べてから選びましょう。相続した家の税金全体は相続した家を売るときの税金で解説しています。
申告に必要な書類
特例を使うには、売った翌年の確定申告で次の書類を添付します(確定申告のやり方)。
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]
- 登記事項証明書など(相続で取得したこと、1981年5月31日以前の建築、区分所有でないことがわかるもの)
- 被相続人居住用家屋等確認書(家がある市区町村に申請して発行してもらう)
- 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し(家ごと売る場合)
- 売買契約書の写しなど(売却代金が1億円以下であることがわかるもの)
「被相続人居住用家屋等確認書」は、亡くなった人がその家に住んでいたことや、空き家だったことを市区町村が確認する書類です。発行までに時間がかかることがあるので、売却が決まったら早めに申請しましょう。電気・水道の使用量がわかる書類などが必要になることがあります。
よくある質問
Q. 兄弟で共有して相続した場合は?
共有者それぞれが特例を使えます。相続人が3人以上なら1人2,000万円、2人以下なら1人3,000万円が上限です。
Q. 自分が住んでいた家も相続した場合は?
自分も住んでいた家(同居していた家)は空き家特例の対象外ですが、自分のマイホームとして通常の3,000万円特別控除が使える可能性があります。
Q. 2028年以降に売る場合は?
現時点では2027年12月31日までの売却が対象です。延長されるかは毎年の税制改正で決まります。期限が近い場合は、早めに査定を受けて売却の準備を始めるのがおすすめです。
まとめ
- 相続した実家を売るとき、最高3,000万円(相続人3人以上なら1人2,000万円)を控除できる
- 1981年5月31日以前の一戸建て、亡くなった人が一人で住んでいたことが条件
- 耐震リフォーム・取壊し・買主による翌年2月15日までの工事のいずれかが必要
- 相続から3年目の年末まで、かつ2027年12月31日までに売る。それまで貸したり住んだりしない
- 市区町村の「被相続人居住用家屋等確認書」が必要
期限があるので、まずは実家がいくらで売れるかを早めに確認しておきましょう。
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