親から相続した実家を売るときには、「相続したとき」と「売ったとき」の2つのタイミングで税金が関係します。相続した家ならではの特例も多く、知っているかどうかで手取りが数百万円変わることもあります。
この記事では、相続税と売却時の税金(譲渡所得税)の基本、そして相続した家を売るときの6つの注意点を2026年時点の制度で解説します。
※2026年11月時点の法令(国税庁タックスアンサー:令和8年4月1日現在の法令等)をもとに作成しています。特例が使えるかどうかは個別の事情で変わるため、最終的には税務署や税理士にご確認ください。
相続した家にかかる2つの税金

| 税金 | タイミング | かかる対象 |
|---|---|---|
| 相続税 | 相続したとき | 相続した財産全体(基礎控除を超える部分) |
| 譲渡所得税・住民税 | 家を売ったとき | 売って得た利益 |
相続税の計算の流れ
- 相続財産を評価する(土地は路線価、建物は固定資産税評価額が基本)
- 借入金や葬式費用などを差し引く
- 基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引く
- 残った額を法定相続分で分けたと仮定して税率をかけ、合計した相続税を実際の取得割合で分ける
たとえば相続人が子ども2人なら、基礎控除は3,000万円+600万円×2人=4,200万円。遺産の合計がこれ以下なら相続税はかからず、申告も不要です。
実家の土地は「小規模宅地等の特例」により、配偶者や同居していた親族などが相続した場合、330㎡までの評価額を80%減らせることがあります。相続税の申告・納付期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。
売ったときの譲渡所得税
相続した家を売って利益が出ると、譲渡所得税がかかります。計算方法は通常の売却と同じですが、取得費と所有期間は亡くなった親から引き継ぐのが大きな特徴です。計算方法の基本は家の売却にかかる税金の計算方法をご覧ください。
相続した家を売るときの6つの注意点

注意点1:まず相続登記を済ませる(2024年4月から義務化)
家を売るには、名義を亡くなった人から相続人に変える「相続登記」が必要です。2024年4月1日から相続登記は義務になり、相続を知った日から3年以内に登記しないと10万円以下の過料の対象になります。2024年3月以前の相続も対象です。売却の予定がなくても早めに済ませましょう。
注意点2:所有期間は親が買った日から数える
所有期間は相続した日ではなく、親が取得した日から計算します。長く住んでいた実家なら「長期譲渡所得」(税率20.315%)になることがほとんどです。
注意点3:取得費がわからないと税金が高くなる
取得費も親が買ったときの金額を引き継ぎます。昔の売買契約書が見つからない場合は「売却価格の5%」しか取得費にできず、利益が大きく計算されてしまいます。実家の書類を整理するときは、売買契約書や建築時の請負契約書、領収書を探しておきましょう。
注意点4:空き家なら「3,000万円特別控除」を検討
親が一人で住んでいた古い家を相続して売る場合、条件を満たせば利益から最大3,000万円を控除できます(被相続人の居住用財産の特例)。
- 1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた一戸建て(マンションは対象外)
- 相続の直前に、亡くなった人以外が住んでいなかった
- 相続から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る
- 売却代金が1億円以下
- 相続後に貸したり住んだりしていない
- 耐震リフォームをするか、取り壊して更地で売る
2024年1月以降の売却からは、売った翌年の2月15日までに耐震改修や取壊しが行われれば対象になり、建物付きのまま売りやすくなりました。一方、相続人が3人以上いる場合の控除額は1人あたり2,000万円に縮小されています。この特例は2027年12月31日までの売却が対象です。市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」が必要なので、早めに手続きを確認しましょう。
注意点5:相続税を払ったなら「取得費加算の特例」
相続税を納めた人が、相続税の申告期限の翌日から3年以内に相続財産を売った場合、払った相続税のうち売った財産に対応する分を取得費に加えられます。そのぶん利益が減り、税金が安くなります。ただし、注意点4の空き家の3,000万円控除とはどちらか一方の選択になるので、両方で試算して有利なほうを選びましょう。
注意点6:共有名義・遺産分割前の売却は全員の合意が必要
兄弟で共有して相続した家を売るには、共有者全員の同意が必要です。売却代金を分ける「換価分割」をする場合は、遺産分割協議書にその旨を書いておくと、贈与と疑われるトラブルを防げます。また、空き家の3,000万円控除は相続人ごとに使えるので、共有にすることで控除の合計額が増えるケースもあります。
空き家のまま持ち続けるリスク
売るか迷って空き家のまま置いておくと、固定資産税や管理の手間がかかり続けます。2023年の法改正で、管理が不十分な「管理不全空家」として市区町村から勧告を受けると、土地の固定資産税の軽減(住宅用地特例)が受けられなくなりました。詳しくは家を売ったときの固定資産税もご覧ください。
まとめ
- 相続した家には「相続税」と「売ったときの譲渡所得税」が関係する
- 売る前に相続登記が必要(2024年4月から義務化)
- 取得費と所有期間は親から引き継ぐ。昔の契約書を探しておく
- 古い空き家は3,000万円控除(2027年末まで)、相続税を払ったなら取得費加算を検討
- 空き家の特例は「相続から3年目の年末まで」に売る必要がある
特例には期限があるため、相続した家を売るか迷っている段階でも、まず査定で価格の目安を知っておくと判断しやすくなります。使える特例の全体像は家の売却で使える特例・控除一覧にまとめています。
▶ 関連:家を売った翌年の確定申告のやり方(相続した家も同じ手順)
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