今の家を売って新しい家に住み替えるとき、税金の特例の選び方を間違えると、新居の住宅ローン控除が使えなくなることがあります。旧居の売却で利益が出るか損が出るかによって、使える特例と、得になる選び方が変わります。
この記事では、住み替えで使える税金の特例、住宅ローン控除との関係、売り先行・買い先行の進め方を解説します。
※2026年11月時点の法令(国税庁タックスアンサー:令和8年4月1日現在の法令等)をもとに作成しています。特例が使えるかどうかは個別の事情で変わるため、最終的には税務署や税理士にご確認ください。
住み替えで使える税金の特例
| 旧居の売却結果 | 使える主な特例 | 新居の住宅ローン控除 |
|---|---|---|
| 利益が出た | ① 3,000万円特別控除(+10年超所有なら軽減税率) | 原則使えない |
| 利益が出た | ② 特定居住用財産の買換え特例(課税の繰延べ) | 原則使えない |
| 利益が出た | ③ 特例を使わず税金を払う | 使える |
| 損が出た | ④ 買換えの譲渡損失の損益通算・繰越控除 | 併用できる |
①と②は、新居に入居した年とその前2年・後3年の間に旧居の売却で使うと、新居の住宅ローン控除が受けられなくなります。利益が出る住み替えでは「売却益の特例」と「住宅ローン控除」のどちらが得かを比べることが大切です。
① 3,000万円特別控除
マイホームの売却益から最高3,000万円を差し引ける特例です。所有期間は問いません。売った年の1月1日時点で10年を超えて所有していれば、残った利益に軽減税率(14.21%)も使えます。詳しい条件は3,000万円特別控除の解説をご覧ください。
② 特定居住用財産の買換え特例
旧居の売却益への課税を、新居を将来売るときまで繰り延べる特例です。税金が免除されるわけではありません。
主な条件
- 旧居に通算10年以上住み、売った年の1月1日時点で所有期間が10年超
- 旧居の売却代金が1億円以下
- 2027年12月31日までに売る
- 新居を売った年の前年から翌年までに取得し、期限までに住む
- 新居の床面積50㎡以上、敷地500㎡以下
- 中古の新居は築25年以内か耐震基準を満たすこと。2024年以降に入居する新築は省エネ基準を満たすことなど
繰延べの仕組み
国税庁の例では、1,000万円で買った家を5,000万円で売り、7,000万円の家に買い換えた場合、4,000万円の売却益への課税が繰り延べられます。将来その新居を8,000万円で売ると、課税される利益は5,000万円(新居の値上がり分1,000万円+繰り延べた4,000万円)になります。
新居の購入価格が旧居の売却価格より安い場合は、その差額分には売却した年に課税されます。3,000万円控除と比べると使いどころは限られ、売却益が3,000万円を大きく超える場合に検討する特例です。
どれを選ぶと得?計算例
旧居(所有・居住12年)を5,000万円で売り、取得費2,500万円、譲渡費用200万円で売却益2,300万円。新居を住宅ローンで購入する場合。
| 選び方 | 旧居の売却にかかる税金 | 新居の住宅ローン控除 |
|---|---|---|
| 3,000万円控除を使う | 0円 | 使えない |
| 特例を使わない | 約327万円(2,300万円×14.21%) | 使える |
この例では、住宅ローン控除で戻る税金の合計が約327万円を超えるかどうかが判断の分かれ目です。住宅ローン控除の額は、借入額、住宅の省エネ性能、入居年、本人の所得税・住民税の額で変わります。売却益が大きいほど3,000万円控除が有利、売却益が小さいほど住宅ローン控除が有利になりやすいと覚えておきましょう。新居の契約前に、税務署や税理士に試算してもらうのが確実です。
④ 損が出たときの買換え特例
旧居を売って損が出た場合は、条件を満たせば損失を給与所得などと相殺(損益通算)でき、相殺しきれない分は翌年以降3年間繰り越せます。この特例は新居の住宅ローン控除と併用できるので、損が出る住み替えでは両方使うのが基本です。
- 売った年の1月1日時点で旧居の所有期間が5年超
- 売った年の前年から翌年までに新居を取得し、新居に償還期間10年以上の住宅ローンがある
- 2027年12月31日までに売る
旧居のローンを返しきれない場合の売り方は住宅ローンが残っている家の売り方をご覧ください。
売り先行と買い先行
| 売り先行(先に売る) | 買い先行(先に買う) | |
|---|---|---|
| メリット | 売却額が確定してから資金計画を立てられる | 新居をじっくり選べる。引っ越しが1回で済む |
| デメリット | 新居が決まらないと仮住まいが必要になることも | 旧居が売れないと二重ローンになる。値下げを迫られやすい |
| 向いている人 | 旧居のローンが多く残る人、資金に余裕がない人 | 資金に余裕がある人、旧居のローンがない人 |
買い先行で旧居がなかなか売れない不安がある場合は、一定期間で売れなければ不動産会社が買い取る「買取保証」という方法もあります(仲介と買取の違い)。
住み替えの税金で注意すること
- 旧居の売却期限:住まなくなってから3年目の年末までに売らないと、3,000万円控除などのマイホームの特例が使えません。
- 売った翌年は確定申告:特例は申告しないと使えません(確定申告のやり方)。
- 翌年度の住民税・保険料:特例を使わずに税金を払う場合、翌年度の住民税や国民健康保険料なども上がります(住民税・国保への影響)。
まとめ
- 利益が出る住み替えでは、3,000万円控除・買換え特例を使うと新居の住宅ローン控除が原則使えない
- 売却益が大きければ3,000万円控除、小さければ住宅ローン控除が有利になりやすい
- 買換え特例は「免除」ではなく「繰延べ」。売却益が3,000万円を大きく超える場合に検討
- 損が出る住み替えなら、損失の特例と住宅ローン控除を併用できる
- どれを選ぶか決めるには、旧居がいくらで売れるかの見通しが欠かせない
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