住宅ローンが残っている家も売ることはできます。ただし、引き渡しの日までにローンを全額返して、銀行の「抵当権」を外すことが条件です。売却代金でローンを返しきれるかどうかで、進め方が大きく変わります。
この記事では、まず確認すべきこと、返しきれる場合(アンダーローン)と返しきれない場合(オーバーローン)の売り方、任意売却、売って損が出たときの税金の特例まで解説します。
※2026年11月時点の法令(国税庁タックスアンサー:令和8年4月1日現在の法令等)をもとに作成しています。特例が使えるかどうかは個別の事情で変わるため、最終的には税務署や税理士にご確認ください。
なぜローンを完済しないと売れないのか
住宅ローンを借りると、家と土地には銀行の抵当権が設定されます。返済が滞ったとき、銀行が家を売って回収できる権利です。抵当権が付いたままの家は、買主にとって「いつ銀行に取り上げられるかわからない家」なので、普通は誰も買いません。
そのため実際の売却では、買主から受け取った代金でその日のうちにローンを完済し、同時に抵当権を抹消するという流れで進めます。手元に完済できるお金がなくても、売却代金で返せれば問題ありません。
まず確認する2つの金額
- ローンの残高:返済予定表、毎年届く残高証明書、ネットバンキングで確認できます。正確な一括返済額は銀行に問い合わせます。
- 家がいくらで売れそうか:不動産会社の査定で確認します。1社だけだと高すぎたり低すぎたりするので、複数社の査定を比べるのが基本です(査定額が妥当か見極める方法)。
このとき、売却にかかる費用も差し引いて考えます。
手元に残るお金 = 売却価格 - 売却の費用 - ローン残高
| 主な売却費用 | 目安 |
|---|---|
| 仲介手数料 | 売却価格×3%+6万円+消費税(売却価格400万円超の場合の上限) |
| 売買契約書の印紙税 | 1万円(1,000万円超5,000万円以下の場合、2027年3月31日までの軽減税率) |
| 抵当権抹消の登記費用 | 登録免許税(不動産1つにつき1,000円)+司法書士報酬 |
| ローンの一括返済手数料 | 0円〜数万円(銀行や金利タイプによる) |
| 引っ越し費用など | 状況による |
この計算がプラスならアンダーローン、マイナスならオーバーローンです。
アンダーローンの場合:通常どおり売れる
売却代金でローンを完済できるので、普通の売却と同じ流れで進められます(家の売却の流れ参照)。ローンが残っている家ならではのポイントは次のとおりです。
- 早めに銀行へ連絡:一括返済の予約が必要です。手続きに1〜2週間ほどかかることがあるので、決済日(引き渡し日)が決まったらすぐに伝えます。
- 決済日の流れ:買主から代金を受け取る → その場で銀行にローンを一括返済 → 司法書士が抵当権の抹消登記と所有権の移転登記を同時に申請します。
- 返済は売却まで続ける:売り出し中も毎月の返済は止めずに続けます。
- 保証料や火災保険料が戻ることも:一括返済すると、前払いしていた保証料や火災保険料の一部が戻る場合があります。
オーバーローンの場合:5つの選択肢
| 方法 | 内容 | 向いている人 |
|---|---|---|
| ① 自己資金で不足分を払う | 貯金などで差額を払って完済する | 不足額が手元資金で払える人 |
| ② 住み替えローンを使う | 新居のローンに、旧居で返しきれなかった分を上乗せして借りる | 住み替えで新居を買う人(審査は厳しめ) |
| ③ 売らずに貸す | 家賃でローンを返しながら、残高が減るのを待つ | 家賃でローン返済と諸経費をまかなえる人(銀行の承諾が必要な場合あり) |
| ④ 売る時期を待つ | 返済を続けて残高を減らしてから売る | 急いで売る理由がない人 |
| ⑤ 任意売却 | 銀行の同意を得て、ローンが残るまま売る | 返済が難しく、滞納しそうな・している人 |
まずは本当にオーバーローンかを確かめることが大切です。査定額は会社によって数百万円違うこともあるため、1社の査定だけで「売れない」と判断するのは早すぎます。売り方を工夫すれば高く売れることもあります(家を高く売るコツ)。
住み替えローンの注意点
新居の価格以上の金額を借りることになるので、返済額が増え、審査も通常より厳しくなります。新居の価値より借入額が大きい状態から始まるため、将来また売るときにオーバーローンになりやすい点にも注意しましょう。
貸す場合の注意点
住宅ローンは本人が住むことを前提にした低金利のローンです。転勤などやむを得ない事情なら認められることが多いですが、無断で賃貸に出すと契約違反になるおそれがあるため、必ず銀行に相談します。また、住まなくなって3年目の年末を過ぎると、売るときに3,000万円特別控除が使えなくなる点にも注意が必要です。
任意売却とは
返済が苦しくなった人が、銀行(債権者)の同意を得て、ローンを完済できない金額で家を売る方法です。返済の滞納が続くと、最終的に銀行は裁判所を通じて家を競売にかけます。任意売却は、その前に市場で売る方法です。
| 任意売却 | 競売 | |
|---|---|---|
| 売れる価格 | 市場価格に近い | 市場価格より低くなりやすい |
| 引っ越し時期 | 相談して決めやすい | 強制的に退去になる |
| 周囲に知られるか | 普通の売却と同じ見え方 | 競売情報が公開される |
| 残ったローン | 銀行と分割返済を相談できることが多い | 残った分は返済が続く |
任意売却は、一般的に返済を数か月滞納した後、銀行や保証会社と相談して進めます。滞納した時点で信用情報に記録が残る点は、どちらでも同じです。「返済が苦しくなりそう」と感じた段階で、まず銀行に返済方法の見直し(返済期間の延長など)を相談し、それでも難しければ任意売却を扱う不動産会社に相談しましょう。
売って損が出たときは税金が戻ることも
オーバーローンの家を売ると、売却価格が買ったときの価格を下回り、譲渡損失(売却損)が出ることがよくあります。その場合、条件を満たせば損失を給与所得などと相殺(損益通算)でき、払った所得税・住民税が戻る可能性があります。相殺しきれない損失は翌年以降3年間繰り越せます。
住宅ローンが残る家の譲渡損失の特例(新居を買わない場合)
- 自分が住んでいる家、または住まなくなってから3年目の年末までに売る家
- 売った年の1月1日時点で、土地・建物とも所有期間が5年超
- 売買契約日の前日に、償還期間10年以上の住宅ローン残高がある
- 売却価格がローン残高を下回っている
- 2027年12月31日までに売る
相殺できる損失は「ローン残高-売却価格」が上限です。新居を買わない場合でも使えます。
買換えの譲渡損失の特例(新居を買う場合)
所有5年超の家を売って損が出て、売った年の前年から翌年までに新居を買い、新居に償還期間10年以上のローンを組む場合などに使えます(2027年12月31日までの売却)。こちらはローン残高の条件がなく、新居の住宅ローン控除とも併用できます。
どちらの特例も、売った翌年の確定申告が必要です。繰越控除を受けるには期限内に申告し、翌年以降も毎年申告を続けます(家を売った翌年の確定申告のやり方)。特例の全体像は特例・控除一覧をご覧ください。
よくある質問
Q. ローン残高がいくらか分からなくても査定は頼めますか?
頼めます。査定とローン残高の確認は同時に進めてかまいません。査定を受けたからといって売らなければいけないわけではないので、まずは現状を知るために査定を使うのがおすすめです。
Q. 夫婦のペアローンや連帯債務の場合は?
売却には共有者全員の同意が必要で、それぞれのローンを完済する必要があります。離婚などで話し合いが難しい場合は、早めに不動産会社や専門家に相談しましょう。
Q. 買取なら早く売れますか?
不動産会社に直接買い取ってもらえば早く現金化できますが、価格は仲介より低くなるのが一般的です。オーバーローンの家では不足額が増えやすいので慎重に比べましょう(仲介と買取の違い)。
まとめ
- ローンが残っていても、売却代金で完済して抵当権を外せば売れる
- まず「ローン残高」と「売れそうな価格(複数社の査定)」を確認する
- 返しきれない場合は、自己資金・住み替えローン・賃貸・時期を待つ・任意売却から選ぶ
- 所有5年超で売って損が出たら、損益通算で税金が戻る特例がある(2027年末までの売却)
売れるかどうかの判断は、正確な売却価格の見込みがあってこそできます。まずは複数社の査定額を比べてみましょう。
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